第1章 はじめに

「技術」という言葉を聞いた時、あなたは何を思い浮かべるだろうか。宇宙ロケットや航空機、自動車に乗って縦横無尽に移動する。薄型テレビやDVD/HDDレコーダーなどAV(オーディオ・ビデオ)機器でテレビ放送や映画を楽しむ。パーソナルコンピューター(パソコン)や携帯電話を使い、インターネットを介して世界各国の人と電子メールをやり取りしたり、オークションで商品を売買する。今やネット経由で、株式を買ったり、銀行へ振り込みを依頼することもできる。いずれも典型的な技術の利用である。

人々が使う製品群の素材を造り出す製鉄所やガラス工場、化学プラントこそ、技術の象徴とみなす人もあろう。電化製品や工場設備に電気を供給する発電所が頭に浮かぶ人もいるだろう。電気に加え、あなたが住んでいる所には水とガスも供給されている。家から外に出て仕事に行くには、電車に乗ったり、車で高速道路を走る。建設技術によって建てられた高層ビルの中にある事務所で、仕事の連絡をとるために電話をかけファクシミリを送信する。身体の調子が悪くなれば病院に行き診療を受け、薬を貰う。電気・水道・ガス・交通機関・通信・病院、社会基盤と言われるこれらの仕組みはすべて技術の賜物と言える。さらに人間が生きていくために必要不可欠な食料は、農業や畜産によって生み出され、ここでも沢山の技術が駆使されている。

もっと身の回りにある、自分自身の手で扱える技術を意識する人もいるはずだ。果物の皮を包丁を使って剥く。火を使って料理する。飯ごうでご飯をたく。鋸と鉋、ハンマーを駆使して本棚を作る。中学校の技術の時間に、文鎮や折りたたみ椅子を作ったことを思い出す人がおられるかもしれない。手を動かして物を作り加工する技術の世界は、コンピューターに代表されるいわゆるハイテクの世界とは違った意味で非常に奥深い。世界的に評価を受けている伝統工芸の職人が持つ、鍛え抜かれた技術は驚くべき水準に達している。